B04 精密数値計算を用いた小型中性子源の高度化

研究代表者:

川崎真介

(大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構・素粒子原子核研究所・准教授)

中性子線は、その高い透過力により、構造体深部の非破壊検査を可能にします。理研小型中性子源システム RANS の開発に有限量子多体系計算を適用することで、産業現場での据え置き型小型中性子源システムや、橋梁などの社会インフラの保全・防災に役立つ可搬型小型中性子源の開発を推進します。

 小型中性子源では陽子ビームを7Liおよび9Beターゲットに照射して中性子を発生します。本研究では A01 班と共同し、その核反応過程に無限小変位ガウス・ローブ関数展開法 (GEM) を適用することで、入射粒子と原子核からなる全系の全自由度を考慮した中性子生成反応の記述を行います。そして、この理論計算と RANS で得られた中性子発生データを比較し、計算の精度を検証します。

また、本研究班では、中性子干渉計を用いた高精度な中性子散乱長の測定も行います。中性子干渉計は、一つの中性子波を二経路に分岐し、それを重ね合わせることで、経路間の相互作用の差を位相差として検出する装置です。J-PARC MLFの冷中性子ビームラインにおいて新たに開発した多層膜中性子干渉計を使用することで、高精度な中性子散乱長データを測定し、理論計算の精度検証に用います。