B02 散乱実験と格子QCDの協働による重粒子間力の解明とハイパー核研究への展開

研究代表者:
三輪浩司
(東北大学・理学研究科・教授)
有限量子多体系の研究では、粒子間の相互作用を知っていれば、基礎方程式であるシュレディンガー方程式を厳密に解くことにより系の構造やダイナミクスを正確に理解することができます。これは、ハイペロン(ストレンジクォークを含んだ重粒子)を構成要素とする量子多体系の研究も同様です。特にΛハイペロンはΛハイパー核という物質を形成し、さらに中性子星深部の構造にも密接に関係する重要な粒子であるが、Λハイペロンと核子との間の相互作用(ΛN相互作用)の不定性が未だに大きいことで、Λハイパー核に現れる多体力(ΛNN3体力)や中性子星の内部構造の微視的な理解などが未解決の課題となっています。B02班では近年可能になったハイペロンと核子の2体散乱実験と格子QCD計算を協働させ、(1)Λハイペロンと陽子の散乱微分断面積の測定、(2) Σハイペロンの生成閾値に現れるカスプ測定によるΛとΣの結合の強さの決定、(3)格子QCD計算によるΛN、ΣNポテンシャルの導出、を推進することで定量的な議論を可能にするΛN、ΣN相互作用を構築することを目指します。この相互作用を理論班(A班)のΛハイパー核の精密計算のインプットとして提供し、得られた計算結果を(4)Λハイパー核の高分解能分光研究で検証します。B02班で構築した相互作用に基づいてΛハイパー核の量子多体系精密計算を展開することで、中性子星内のΛの斥力化の鍵となるΛNN3体力を解明する基盤を構築します。